「施工を行う」は文法上の誤りではありませんが、少し回りくどい表現です。読みやすい文章にするなら「施工する」、一般の人へ分かりやすく伝えるなら「工事を行う」と言い換えます。
ただし、「施工管理を行う」は「施工」ではなく「施工管理」という業務を行うため、不自然ではありません。
この記事では、工事案内、メール、施工計画書、議事録で迷いやすい表現を例文で整理します。
「施工を行う」は間違いではない
「施工」には、設計や計画に基づいて工事を実施する意味があります。そのため「施工を行う」は、「実施することを行う」のように意味が重なり、冗長に感じられます。
一方、名詞の「施工」と動詞の「行う」を組み合わせた表現として意味は通じます。契約書、仕様書、行政文書などで使われることもあるため、一律に誤用とはいえません。
文章を短く明確にしたい場面では、次のどちらかへ直します。
- 建設実務の相手に伝える:施工する
- 施主や近隣住民に伝える:工事を行う
セツビズ間違いかどうかより、誰に何を伝える文章かで選びましょう。社内の施工図なら「施工する」、近隣案内なら「工事を行う」が伝わりやすいです。
自然な言い換え一覧
| 元の表現 | 自然な言い換え | 用途 |
|---|---|---|
| 当社が施工を行います | 当社が施工します | 会社・担当範囲の説明 |
| 来月から施工を行います | 来月から工事を行います | 一般向けの案内 |
| 給排水設備の施工を行う | 給排水設備を施工する | 技術文書 |
| 夜間に施工を行う | 夜間工事を行う | 工事案内 |
| 仕様書に基づき施工を行う | 仕様書に基づいて施工する | 施工計画書 |
| 補修の施工を行う | 補修工事を行う | 報告書 |
| 施工状況の確認を行う | 施工状況を確認する | 日報・議事録 |
| 安全管理を行う | そのままでよい | 管理業務の説明 |
| 施工管理を行う | そのままでよい | 職務内容の説明 |
「施工する」と「工事を行う」の使い分け
「施工する」は専門的で簡潔
施工会社、施工範囲、施工方法など、建設業の関係者が読む文章では「施工する」が簡潔です。
- A社が空調設備を施工する
- 承認図に基づいて施工する
- 既設配管を撤去した後、新設配管を施工する
誰が何を施工するかを明確にすると、責任範囲も伝わります。
「工事を行う」は一般向けに分かりやすい
施主、施設利用者、近隣住民など、建設用語に慣れていない人には「工事を行う」が分かりやすい表現です。
- 8月1日から改修工事を行います
- 午前9時から騒音を伴う工事を行います
- 通路を規制して舗装工事を行います
「施工」だけでは工事内容が伝わりにくいため、「改修工事」「舗装工事」のように具体化します。
「施工を実施する」も意味が重なる
「施工を実施する」も意味は通じますが、「施工を行う」と同じく少し硬く冗長です。「施工する」または「工事を実施する」にすると簡潔です。
工事案内の書き換え例
修正前
下記の日程にて給排水設備の施工を行います。施工を行う時間帯は午前9時から午後5時までです。
修正後
下記の日程で給排水設備の改修工事を行います。作業時間は午前9時から午後5時までです。
「施工」を繰り返さず、一般の人が知りたい工事内容と時間へ置き換えています。
メールの書き換え例
修正前
明日、3階機械室にて配管の施工を行う予定です。施工を行う前に現地確認をお願いします。
修正後
明日、3階機械室の配管を施工する予定です。着工前に現地確認をお願いします。
同じ語を繰り返す場合は、「着工前」「作業前」「工事前」など、時点を示す言葉へ変えると読みやすくなります。
施工計画書の書き換え例
修正前
配管支持金物の施工を行った後、配管の施工を行う。
修正後
配管支持金物を取り付けた後、配管を施工する。
「施工する」だけでなく、実際の作業である「取り付ける」「撤去する」「据え付ける」「接続する」を使うと、手順が明確になります。
議事録・日報の書き換え例
| 修正前 | 修正後 |
|---|---|
| 施工状況の確認を行った | 施工状況を確認した |
| 墨出しの実施を行った | 墨出しを行った |
| 是正作業の施工を行った | 是正作業を行った |
| 監督員との協議を行った | 監督員と協議した |
| 搬入の調整を行った | 搬入を調整した |
「○○の確認を行う」は、名詞を動詞へ戻すだけで簡潔になります。
「施工管理を行う」はおかしい?
「施工管理を行う」は不自然ではありません。「施工管理」は、工程・品質・安全・原価などを管理する業務名だからです。
ただし、文章によっては具体化した方が伝わります。
- 現場の施工管理を行う
- 工程・品質・安全を管理する
- 電気設備工事の施工管理を担当する
職務経歴書では「施工管理を行った」だけで終わらせず、工種、規模、立場、担当範囲を加えましょう。
「工事を施工する」はおかしい?
「工事を施工する」は実務で使われますが、「工事」と「施工」の意味が近いため、文章によっては重く見えます。
- 当社が本工事を施工する
- 当社が本工事を行う
- 当社が設備を施工する
契約上の「本工事」を対象にするなら「本工事を施工する」でも意味は明確です。一般向けの文章なら「本工事を行う」の方が読みやすくなります。
文章を直すときのチェック項目
主語が分かるか
「施工を行う予定です」だけでは、誰が施工するのか分からない場合があります。責任範囲が重要な文書では「A社が施工します」と主語を入れます。
対象が分かるか
「設備を施工する」より、「空調機を据え付ける」「給水配管を施工する」の方が具体的です。
日時と場所が分かるか
工事案内では表現の自然さだけでなく、日付、時間、場所、影響範囲、問い合わせ先が必要です。
同じ言葉を繰り返していないか
一つの段落で「施工」が続く場合は、「工事」「作業」「着工」「設置」「確認」など、実際の内容に合わせて置き換えます。
よくある質問
「施工を行う」は二重表現?
意味の重なりはありますが、文法上の誤りとまではいえません。簡潔にするなら「施工する」へ直します。
「工事を行う」と「工事を実施する」はどちらがよい?
どちらも使えます。「行う」は一般的で読みやすく、「実施する」は計画や規定に基づく硬い文章で使われやすい表現です。
「施行」と「施工」の違いは?
建設工事を実際に行う意味では「施工」を使います。「施行」は法律や制度を実施する意味で、「法律を施行する」のように使います。
「施工のお知らせ」という件名でよい?
意味は通じますが、住民や施設利用者向けなら「改修工事のお知らせ」「給排水工事のお知らせ」のように、工事内容を具体的にした方が親切です。
まとめ
「施工を行う」は誤りではありませんが、文章を簡潔にするなら「施工する」、一般向けに伝えるなら「工事を行う」が自然です。
施工計画書や日報では、「取り付ける」「据え付ける」「確認する」など実際の動作へ置き換えると、内容も明確になります。表現を直すときは、主語、対象、日時、場所まで不足していないか確認してください。
なお、仕事や会社そのものに「おかしい」と感じて検索した方は、建設業界がおかしいと感じる理由を参考にしてください。
公的情報・確認先
記事の判断材料として確認する公的情報です。個別企業の求人条件やサービス内容は変わるため、応募・申込み前に勤務先や各サービスの公式情報も確認してください。
確認日:2026年7月28日