建設業は「請負契約」の世界です。契約書に書かれていること、引用されている仕様書や法令は、すべて遵守する義務があります。工事写真においても例外ではありません。
「いつも通り撮っておけばいいだろう」という慣れが、思わぬ法令違反や契約不履行を引き起こす可能性があります。
ここでは、工事写真管理において絶対に押さえておくべき法規と規格について解説します。
1. 建設業における写真管理の関連法規
法律そのものに「工事写真を撮りなさい」と明記されている条文は少ないですが、間接的に、あるいは解釈として必須となるケースが多々あります。
建設業法
建設業法には「帳簿の備え付け・保存」義務(第40条の3)があります。これには施工体制台帳などが含まれますが、写真そのものの保存義務は明記されていません。しかし、帳簿の記載内容が「事実である」ことを裏付ける資料として、写真は不可欠です。
また、「適正な施工の確保」が求められており、写真はその適正施工の証拠となります。
品確法・住宅瑕疵担保履行法
「品質確保の促進等に関する法律(品確法)」により、新築住宅の基礎構造部分等には10年間の瑕疵担保責任が義務付けられています。万が一、引き渡し後に不具合が生じた場合、施工者は「施工に過失がなかった(瑕疵ではなかった)」ことを証明しなければなりません。そのための唯一にして最強の証拠が工事写真です。写真がない場合、抗弁できずに多額の賠償責任を負うリスクがあります。
2. 品質管理の国際規格「ISO9001」
多くの建設会社が取得している品質マネジメントシステム「ISO9001」。この中でも記録管理は非常に重要な位置を占めています。
エビデンスとしての写真
ISO9001では、プロセスが適切に実行されたことの証拠(エビデンス)を残すことが求められます。
- 不適合の是正: もし不適合(ミスや規格外)が発生した場合、それをどのように修正し、再発防止策を講じたか。そのBefore/Afterを写真記録として残すことは、ISO審査においても頻繁に確認されるポイントです。
- トレーサビリティ: いつ、誰が、どの材料を使って施工したか。写真によって材料のロット番号などを記録しておくことで、追跡可能性を確保します。
3. 絶対的なルールブック「国土交通省基準」
公共工事を請け負う場合、以下の2つの基準書は「聖書(バイブル)」です。常に現場事務所の机に置いておくべきものです。
(1) 工事写真管理基準
「何を」「どの頻度で」撮るべきかを定めた基準です。
- 撮影箇所: 出来形管理写真、品質管理写真それぞれの撮影対象が工種ごとに指定されています。
- 編集の禁止: 原則として、写真の改ざん(合成、修正)は禁止されています。ただし、電子小黒板の利用など、デジタル化に伴う緩和措置や新ルールも随時追加されています。
(2) 電子納品要領(案)
「どのように」データを作成し提出するかを定めた基準です。
- バージョン管理: 「平成○○年○月版」というように版数があり、契約時の特記仕様書で指定されたバージョンに従う必要があります。古いバージョンの知識で作っても、受け取ってもらえません。
- 信憑性確認(改ざん検知): デジタルデータであるがゆえの「改ざんの容易さ」を防ぐため、ハッシュ値を用いた改ざん検知機能(信憑性確認機能)を有するソフトの使用が求められています。
まとめ:ルールを知ることは、身を守ること
「面倒な決まりごと」と考えがちですが、これらの法規や規格は、一定の品質を確保するためのガイドラインであると同時に、施工者を不当なクレームから守るための枠組みでもあります。
「ルール通りに写真を撮り、残している」という事実が、会社の信用を守り、技術者としてのあなたを守ってくれます。
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