建設業の基礎知識

停電しても水をくみ出すポンプは動く? 国交省の点検ルールをやさしく解説

大雨で道路に水がたまったとき、水をくみ出すポンプは大切な役割を果たします。では、同時に停電が起きたらどうなるでしょうか。国土交通省は2026年10月6日、道路の設備を点検するマニュアルを一部改定しました。大切なのは、停電しても設備がつながって働き、水をくみ出せるかを確かめることです。何が変わったのか、順番に見ていきましょう。

低い道路にたまった水はどうやって外へ出す?

道路や線路の下をくぐる、周りより低い道があります。これがアンダーパスです。雨が降ると、低い場所へ水が集まることがあります。そこにたまった水を外へ送る設備が、道路排水設備です。水をくみ上げるポンプなどが、この仕事を担います。

電気で動くポンプには、電気が必要です。そこで、停電したときに電気をつくる設備を備えている場所があります。これを非常用発電設備と呼びます。ふだんの電気が使えないときに備える設備です。

ただし、電気をつくる設備が動けば、それだけで水を外へ出せるとは限りません。必要な機器に電気が届き、ポンプなども働く必要があります。点検では、それぞれの機械の状態に加え、設備どうしのつながりも大切になります。これは、今回の改定を理解するための出発点です。

出典:[3]

今回の改定で何がはっきりした?

きっかけは、2026年8月の千葉の豪雨です。国道16号の村田町アンダーパスで、道が水につかる事案が起きました。国交省はこれを受け、設備全体が確実に働くことを確認するため、点検マニュアルを一部改定したと説明しています。

新しく加わった説明は、アンダーパスの道路排水設備に使う非常用発電設備についてのものです。停電したときに動き始める条件、自動で動かすしくみ、電気の通り道などを確かめます。そのうえで、必要な機器に電気が届くことにも気を付ける、としています。

さらに、年点検で行う管理運転について説明が加わりました。管理運転は、設備を動かして、その働きを確かめるための運転です。今回の追記では、停電してから発電設備が動き始め、排水設備が働くまで。この一連の動作を、原則として実負荷で確認するとしています。

実負荷とは、ここでは実際に電気を使う設備を動かした状態のことです。発電設備だけを見て終えるのではなく、電気を受け取った排水設備が働くところまで確かめる、という点が重要です。改定されたマニュアルの運用は、2026年10月6日に始まりました。

出典:[1] [2]

電気をつくるところからポンプまでつながっている

身近な例として、テレビを考えてみます。テレビ本体が正常でも、電源コードが外れていれば映りません。電源コードに問題がなくても、コンセントまで電気が来ていなければ使えません。一つ一つの道具の状態と、つながった全体の働きは、分けて考える必要があります。

道路の排水設備はテレビより複雑ですが、つながりを見るという考え方は似ています。電気をつくる設備、電気を届けるしくみ、水をくみ出す設備。それぞれが必要な場面で働いて、初めて全体の仕事につながります。

図1は、その関係をやさしく表したものです。実際の設備には、場所ごとに違う動き始めの条件や電気の通り道があります。図の矢印は、現場で操作する順番ではありません。配線図でもありません。設備がどのようにつながって働くかを理解するための図です。

出典:[2] [3]

図1 停電したときのしくみ

停電したとき、予備の発電設備が動き、必要な機器に電気が届き、ポンプなど排水設備が動くつながりを説明しています。最初の停電は状況を表し、停電させる指示ではありません。操作の順番や配線図ではありません。

停電する
予備の発電設備が動く
必要な機器に電気が届く
ポンプなど排水設備が動く

動き出す条件・自動で動かすしくみ・電気の通り道

しくみのつながりを表す図です。操作の順番や配線図ではありません

前から全体を見る点検はあった

今回のニュースだけを見ると、これまでは一台ずつ動けばよかった、と受け取るかもしれません。しかし、改定前のマニュアルにも、年点検で設備全体の働きを確認する考え方がありました。特別な理由がない限り、定期点検で管理運転を行うという基本も書かれていました。

今回加わったのは、アンダーパスに使う非常用発電設備について、何をつなげて確かめるかを、より具体的にした説明です。停電から電気をつくり、排水設備が働くまでを確認する。その場面をはっきり示した、と読むと分かりやすくなります。

一つ一つの機械を見る点検も、引き続き大切です。図2は、一台ずつの状態を見ることと、つながりまで見ることの違いを表しています。どちらか片方だけでよい、という図ではありません。昔と今の点検を単純に比べた図でもありません。

出典:[2]

図2 二つの確かめ方

上段は電気をつくる設備、電気を届けるしくみ、水をくみ出す設備を一つずつ確かめます。下段は同じ設備をつなげ、全体で動くかも確かめます。昔は一つずつの点検だけでよかった、という意味ではありません。

一つずつ確かめる

電気をつくる設備
電気を届けるしくみ
水をくみ出す設備

つながりまで確かめる

電気をつくる設備
電気を届けるしくみ
水をくみ出す設備

一つずつの点検に加え、全体で動くかも確かめます

昔は一つずつの点検だけでよかった、という意味ではありません

どこの発電設備でも同じルールになる?

まず、マニュアル全体の対象を確認しましょう。本文には、国が直接管理する道路の施設に設置された機械設備が対象と書かれています。これが、資料で使われている直轄管理という言葉の意味です。

その中で、今回の追記が具体的に取り上げているのは、アンダーパスの排水設備に使う非常用発電設備です。この発表だけを見て、民間の建物や会社にある発電機も、すべて同じ新しい法律の義務を負う、と考えることはできません。

自分の担当する設備にどう当てはまるかは、設備を管理する人に確認します。契約で使うと決めた基準や、その施設の点検計画も見ます。同じ種類の機械だからといって、対象や条件まで同じとは限らないためです。

出典:[2] [3]

点検する回数は増えた?

今回公表された新旧対比表には、点検周期を変更する記載はありません。新旧対比表は、改定前と後の文章を並べた資料です。点検周期とは、どのくらいの間隔で点検するか、という意味です。今回の追記は、主に年点検で何を確認するかについての説明です。

マニュアルの表では、アンダーパスの道路排水設備は、年点検が年1回、月点検が月1回とされています。ただし、機器ごとの役割に応じて点検の区分を考える記載もあります。設備の目的や構造などに応じ、必要な点検周期を設定できるという記載もあります。

そのため、毎月すべての機器に同じ確認を増やせばよい、とは言えません。担当施設に決められた計画と照らし合わせることが必要です。別の法律で決まっている点検があれば、それも確認します。

また、実負荷での確認には、原則としてという言葉が付いています。基本となる考え方を示す言葉です。ただし、今回の追記には、省略できる条件の一覧や、代わりの確認方法の詳しい説明はありません。自分だけで省略を決めず、管理者や専門の担当者と条件を確認してください。

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担当者はまず何を準備すればいい?

ここからは、セツビズ編集部が考えた打合せ前の準備です。国交省が新しく決めた作業手順ではありません。いきなり設備を操作するのではなく、手元の資料を集め、分からないことを整理するところから始めます。

まず、使う資料をそろえます。点検マニュアル、設備の一覧、メーカーの説明書、前回の点検報告書などです。同じ資料名でも、新しい版と古い版が混ざっている場合があります。今回の内容を確認するなら、令和8年10月の改定が入ったマニュアルかどうかも見ておきます。

次に、前回はどこまで確認したのかを調べます。電気をつくる設備の報告書と、ポンプの報告書が分かれていることもあります。両方の資料から、つながりまで確認したことが分かるでしょうか。記録が見つからなくても、すぐに未実施と決め付けず、分からない点として担当者に確認します。

続いて、誰に何を聞くかを整理します。設備を管理する人、機械の担当者、電気の担当者、点検をする会社、メーカーなどです。誰が計画を確認し、誰が実施条件を判断するのかを、先にそろえます。機械と電気の担当範囲が分かれている場合は、その間のつながりを誰が確認するかも大切です。

そして、安全に確認するための条件を相談します。停電時の一連の動作を、どの方法で確かめるか。確認中に施設へどんな影響があるか。異常があったら誰が中止を判断するか。これらは、管理者、メーカー、必要な資格や知識を持つ担当者が計画することです。この記事や図を見て、電源を切ったり、設備のスイッチを操作したりしないでください。

最後に、結果をどう残すかを確認します。何を、どんな条件で、どこまで確かめたのかが分かる記録を目指します。確認できなかった部分があるなら、結果と分けて残します。次に誰が確認するかも決めておくと、担当者が代わっても話を引き継ぎやすくなります。

異常なしの一言で終わらせないために

点検報告書に異常なしと書かれていても、その言葉だけでは、どこまで見たのか分からない場合があります。発電設備だけを確かめたのか、電気を届けるしくみまで見たのか。読んだ人が確認範囲をたどれることが大切です。

マニュアルは、点検結果を決められたチェックシートに記録し、その後の整備や管理に役立てる考え方を示しています。補足のメモを作るなら、必要な報告書を置き換えるのではなく、資料どうしをつなぐ案内として使うと整理しやすくなります。これは編集部の提案であり、今回新しい帳票が指定されたという意味ではありません。

また、点検で設備が動いたことと、どんな大雨でも道路が水につからないことは別の話です。同じ日に公表された国交省のガイドラインは、水を外へ出す対策に加え、通行止めや車の進入を防ぐ対策も組み合わせるとしています。点検の結果だけで、道を安全に通れるかまで判断することはできません。

出典:[3] [4]

大切なのはつながって働くかを確かめること

今回の改定は、アンダーパスの排水を支える設備について、停電からポンプなどが働くまでのつながりを、より具体的に確かめるためのものです。担当者が最初にできることは、対象の設備、使う基準、今の点検計画、これまでの記録をそろえることです。そのうえで、関係者と確認の範囲を話し合いましょう。

この記事は2026年10月7日時点の国土交通省資料をもとに、セツビズ編集部がやさしく説明したものです。図と準備の例は、国交省が作成・監修したものではありません。実際の点検方法や法律上の扱いは、最新の公式資料と、それぞれの施設の条件を確認してください。

出典:[2] [3]

出典・参考資料

出典確認:2026年10月7日
公開前の公式資料再照合:2026年10月8日

  1. 国土交通省 2026年10月6日 報道発表

    改定背景、年点検時の実負荷確認、2026年10月6日の運用開始

  2. 道路関係設備 点検 整備 更新マニュアル 新旧対比表

    PDF 2ページ目、本編25ページに対応。改定前からある基本方針と追加段落を比較

  3. 道路関係設備 機械設備 点検 整備 更新マニュアル 令和8年10月一部改定

    本編1ページは適用範囲、25ページは追加段落、27〜30ページは点検区分・周期・記録。PDFではそれぞれ5、29、31〜34ページ

  4. 国土交通省 アンダーパスの冠水事故防止に向けたガイドラインを策定

    2026年10月6日。通行規制、車両進入防止、排水機能を組み合わせる考え方

図は編集部が説明のために作ったものです。実際の点検や操作の手順ではありません